相続対策のノウハウ

二、相続対策の区分

1 法律対策
(1)相続の法律知識の熟知
(遺留分、相続放棄等)
(2)遺産分割対策
 a. 遺言の活用
 b. 養子縁組の活用

2 税金対策
(1)節税対策
 a. 財産の移転
(生前贈与等)
 b. 評価の引き下げ
(借入金の活用、不動産の購入、不動産の賃貸等)
(2)納税資金対策
(生命保険金の活用、物納対策)
(3)税務調査対策
(家族名義預金の整理等)

3 事業承継対策
(1)後継者の育成
(2)法人設立、経営の贈与等


三 法律対策

T 法律知識
1 法定相続人と相続分
 配偶者は、いつも相続人となれますが、次の順位により相続分と他の相続人が変わります。
(1)相続の順位と相続分
・第1順位
 配偶者1/2
 子1/2
・第2順位
 配偶者2/3
 親1/3
・第3順位
 配偶者3/4
 兄弟姉妹1/4

 子(孫などの直系卑族)がいないときは親が相続人となります。
 親(祖父母などの直系尊族)がいない時は兄弟姉妹が相続人となり、同順位でそれらの者が2人以上いるときは、その相続分を人数で按分した相続分となります。

(2)配偶者
 戸籍上の配偶者をいい、内縁の妻(夫)は相続権がありません。
 ただし、生命保険金は受取人に支給されます。

(3)子(直系卑族のことで第1順位の相続人)
1. 代襲相続
 相続の開始の時に、既に死亡している子がいるときは、その子の子(被相続人の孫)が相続人となり、孫が死亡しているときは曾孫という様に下へ代襲されていきます。
 孫が2人以上いるときは、その子の相続分を人数で按分した相続分となります。
2.養子
 養子は実子と同等の権利を有します。
3.内縁の妻の子
 いわゆる愛人の子には相続権はありませんが、認知すれば非嫡出子として相続権を有すします。
 ただし、相続分は嫡出子の2分の1となります。
4. 配偶者のつれ子
 配偶者のつれ子には、相続権や代襲相続権はありません。
5.先妻の子と後妻の子
 先妻の子と後妻の子は、いずれも実子であり、相続分は均等です。
6.胎児
 相続開始の時に未だ生まれていない子、すなわち「胎児は、既に生まれたものとみなす」という規定があり、相続人となります。
 ただし、死産の場合はいなかったものとして取り扱われます。

(4)親(直系尊族のことで、第2順位の相続人)  実親と養親の双方に相続権が有ります(特別養子は除く)。
 両親が既に死亡しているときは、祖父母、曾祖父母など(父方、母方双方の祖父母など)が相続人となります。

(5)兄弟姉妹(第3順位の相続人)
 既に死亡している兄弟姉妹がいるときは、その子供まで代襲相続できる(孫以下は相続できない。)。
 父母の一方だけが同じである兄弟姉妹は、他の兄弟姉妹の相続分の2分の1となります。

(6)相続人になれない場合(相続欠格)
 故意に被相続人又は先順位もしくは同順位の相続人を殺し、又は殺そうとして刑に処せられた者やその他一定の事情があれば、相続人となることができない定めがあります。

(7)相続人の廃除  被相続人の意思によって相続権をうばう制度があります。生前又は遺言にて家庭裁判所へ申し立てます。 被相続人に対して、虐待をし、もしくは重大な屈辱を加えたとき。 その他の著しい非行があったとき。

2 遺言相続・法定相続と遺産分割
 遺言があれば、遺言を優先させ、次に民法では法定相続分のとおりに遺産を分けることを規定していますが、相続人の意見の一致さえあれば、どんな割合で遺産を分けても無効になることはありません。
 相続人全員で遺産分割協議書を作成し、全員が実印で捺印することが必要です。

3 遺留分
 遺言で、例えば全財産を長男に相続させるという指定があっても、他の相続人には最小限度残してもらえる部分を法律で定めています。
 これを遺留分といい、この遺留分の権利は、 一般的な場合は、法定相続分×2分の1、父母などの直系尊族だけが相続人であるときは、法定相続分×3分の1、ただし兄弟姉妹には遺留分はありません。
 この遺留分は、その権利を侵害された者が、遺留分減殺請求権の提訴をしなければ、取り戻しをすることはできません。
 又、遺留分を侵害されたことを知った時から1年、あるいは相続開始の時から10年を過ぎると時効で消滅します。

4 相続したくないとき(相続放棄)
 相続とは、被相続人の財産と借金も併せて引き継ぐことですから、借金の方が多い場合は、相続の放棄をすれば良い。
 この放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に」家庭裁判所へ申述するという方法になる。
 なお、3ヵ月の期間は家庭裁判所へ延期を請求することもできます。

5 借金だけは相続したくないとき(限定承認)
 借金より財産が多いときは、全部相続(単純承認)をします。
 この場合は何の手続きも要しませんが、財産より借金が多いときは相続放棄、財産と借金のどちらが多いか判断できないときは、限定承認の制度があります。相続財産中の債務を整理して、余りが出た分だけ相続し、余りが出なければ相続はしないという制度で、これも3ヵ月以内に家庭裁判所へ申述して行います。
 ただし、被相続人に譲渡所得の税金が課税される場合がありますので、事前に税理士に相談してください。

U 遺産分割対策

 紙面の都合で2つに絞って説明します。

1 遺言の活用
 生前中に、自分の死後、相続人以外の人に財産を与えたり、特定の相続人に財産を多く残したり、財産の処分や、相続分の指定等を遺言しておくことができます。
 遺言の種類には、自筆証書、公正証書、秘密証書等がありますが、最も安全で確実な公正証書遺言をお勧めします。これは公証人役場で、証人2人の立会いの上、公証人が作成してくれるもので、費用がかかるが安心です。 相続開始後、自筆証書遺言を発見したときは、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。 遺言書は何回でも書き直して作成することができます。最後に書いた遺言書が有効となります。
 2 養子縁組の活用  孫や子供の配偶者などを養子にすることによって、本来相続人でない者を相続人にして、財産の相続や節税対策ができます。手続きは簡単で市町村役場へ証人2人の認印を押して届けるだけで良い。養子は養親と実親(特別養子は除く)双方の相続権を有します。

3 実例と対策
(1)後妻と先妻の子のケース
 先妻の長女(以下、「A」)と後妻は同居し、Aは後妻の看護をしていたが、今回後妻が死亡した。しかしAは相続人になれず、後妻に子がいないため全財産は弟が相続することとなった、というケースです。 <対策1>
 生前に後妻とAを養子縁組しておけば良かった。
 Aが養子になれば、子がいるケースの第1順位に該当し、Aだけが相続人となれました。
<対策2>
 もう一つの方法は、生前に後妻はAに全財産を相続させる遺言書を作成しておけば良かった。この場合、兄弟姉妹には、Tの3で記述したとおり遺留分はないため、遺言どおり全財産をAは相続できることになります。 (2)夫婦に子がいないケース  夫が亡くなり、夫婦に子供はいない。この場合の相続人は妻・兄・弟(以下、「甲」・「乙」・「丙」)の3人となり、法定相続分は甲が4分の3、乙と丙がそれぞれ8分の1となる。遺産分割にあたり、乙・丙がそれぞれの法定相続分を主張し、双方に分割する金銭がないので、やむなく住居を売却して、乙・丙に金銭にて分割することとなった、というケースです。 <対策>  妻の老後を考えて、夫は生前にどうしておけば良かったのか? 夫は甲に全財産を相続させる遺言書を作成しておけば、乙・丙に遺留分はないため、全財産を甲のものとすることができました。相続が「争族」にならないために、事前の対策を検討することをお勧めします。


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