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知らないと損する!「相続の法律と税金」誰も教えてくれない相続対策のノウハウ
一 相続対策の必要性
二 相続対策の区分
三 法律対策
四 省略
五 省略
六 事業承継対策
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六 事業承継対策


 人間の命には限りがあるが、企業の命は永遠でなくてはならない。
 事業を次代に引き継がせる行為、仕事は現社長の最後の大事業である。しかも、事業は好況のときも不況のときもあり、厳しい時期に世代交代を考えなければならない経営者の方々に とっては、その選択が非常に重要な判断であるだけに充分に思慮を巡らせ、慎重に決断をくださなければならない。ふつう事業承継というと事業(経営)の承継と財産の承継の二つの面がある。


1 事業(企業)承継の二つの側面

(1)経営権の承継
 社長(店主)の座の引継ぎの問題である。

(2)所有権の承継
 法人の場合は株式、個人事業の場合は財産の引継ぎの問題、すなわち相続税対策である。


2 経営(権)の委譲(事業承継)

 これは現社長の最大の事業である。これがうまくいくかいかないか、先代社長が裸一貫で苦労して築き上げた事業が二代目でつぶれたら何もかもおしまいである。経営の神様と言われた松下幸之助が、今でも尊敬されるのは、パナソニック(株)が現存し、発展してきたからである。そういう意味では、現社長の最後の花道を飾る、人生の総仕上げである。

(1)長期的、計画的に、税務面、対外面を考えて

 万が一の事態が生じてからでは遅すぎる。かなりの時間をかけて計画的な準備が必要。いつ交替するのか、あと何年後か、何事も準備体操が必要で「今日から社長をやれ」ではダメである。

(2)事業承継の課題

@ 後継者の育成教育

 その事業の仕事は当然、習得しておかねばならないが、経営者としての経営の勉強もさせておかねばならない。他の会社に一時預けて、他人のメシを食わせるとか、直前までは専務としての役割分担をさせ、外部セミナーや団体等にも参加させて、幅広い体験をさせておくことである。

A 経営環境(人、もの、金、管理)の整備
(人)
社長が引退すれば古い幹部もやめてもらう。もちろん全員とは言わない。社長が最も信頼する人は残しておく。内閣総理大臣がやめれば、財務大臣や幹事長も降りるように、旧経営陣も一緒に引くことである。後継者が新しい考え方で経営ができるように、若い人を採用して企業の若返りをはかる。又、新役員構成を決めておく。
(もの)
機械、車、設備等の整備や社長室、机の配置などである。又、遊休資産の売却もしておく。
(金)
特に借入金、今の利益では返済できない借金をどうするか。社長個人の土地を売却して返済しておくか、借入金に見合う生命保険契約は残しておく。ゼロからの出発ならやり易いが、マイナススタートでは後継者が苦しむ。又、不良債権なども整理(回収)しておく。
(管理)
後々の社員の退職金や定年の問題もある。就業規則、賃金規定、退職金規定等の作成(改正)である。社員に言いにくい事、後で変更しにくい事、予想されるゴタゴタは交替の前に整備しておく。新社長がやり易い体制の整備である。
B 地位の引継ぎ(誰を社長にするか)

 同族経営では一般に、専務や常務をしている社長の息子が新社長になるであろうが、いくら息子でも入社してすぐ社長はない。息子が未だ若く社員に高齢者が多い場合は、一時的に優秀な社員を社長にしておく方法もある。

C 兄弟がいる場合の留意点

 後継者に兄弟がいる場合、どちらを社長にするか。双方経営に携わる場合はどうするか。兄弟はもめる場合が多い。兄弟経営でも長男が非常にやり手で、次男とは年が離れていて、次男の方がおとなしいときは、あまり問題とはならない。そうでない場合は、一般的に「兄弟経営並び立たず」といわれている。うまくいけば力強い会社となるが、注意が必要である。対策として分社経営をやらすか、あるいは財産を分与して一方に新しい事業をやらせるかである。どうしても同じ会社で兄弟が引継ぐ場合は、法人の場合の株式の持分に注意すること。持株割合50:50ではもめた場合に解決がつかない。51:49 なら過半数の決議で経営が運ぶことになる。

(3)経営者交替の危機とその時期

 現社長の突然の死亡によって社長交替をしなければならなくなった時は、会社の危機であり、即、倒産につながる場合もある。長期的・計画的に生前中に事業承継をしておかなければならない。 万が一の事態が生じてからでは遅すぎる。

  1. 引きどころを考える
     事業承継は、その時期が早すぎても、遅すぎてもダメである。口では譲るといいながらなかなか譲らない。そして自分の気力、体力が萎え、頭のほうもだんだん固くなって、周りから仕掛けられてやめさせられるのは一番悪い例である。 引退は一番良い時にする。引き際が大事で野球やすもうと同様に花道を飾って引退しなければならない。鮮やかに身を引いて自分というものを演出していくのである。
     社長が心身共に元気な内にそして会社の業績が良い時に行うことである。何故なら、後者については利益が出ていれば法人の場合退職金を支給して節税ができる。支給の年は赤字になっても中小企業の場合は9年間損失を繰越せるので法人税等の負担が軽減できる。

  2. 交替の時期をいつにするか
     退きどきにはタイミングというものがある。
    ・ 親子の年齢の節目
     1つには親の年が65歳とか70歳とかの節目に行う方法が良い。私の持論から言うと息子40歳か親65歳のいずれかが良いと思う。 大概息子が専務で青年会議所(JC)に所属している場合が多い。JCは40歳を超えると卒業であるが直前まではいろいろな役を持たされ経営に専念できない。一方、親の方は65歳で老齢年金が支給されるので社長職を退いても生活に困らない。一般的に長男が40歳の時、親は65歳から70歳が多い。
    ・ 記念の節目
     会社の記念日、たとえば創業30周年とか、平成30年とか、2020年とか区切りのある時期に合わせて鮮やかに身を引く事である。
(4) 承継後の課題

  1. 権限と責任の移譲
     新社長には重要な意思決定の機会が与えられるはずであるが、たとえば、専務をしている息子を社長にして、社長が代表権を持つ会長になる。これではただ名前が変わっただけで経営を譲ったことにはならない。経営を譲るということは何を譲るのか。名前だけでなく「権限」と「責任」を譲ることである。では権限とは何であるかと言うと三つある。一つは、金銭に関する決裁権。お金を譲らないと本当の経営者の権限にはならない。二つ目は、人事権。だれを課長にするか。だれを部長にするか、そうしたことも決める人事権を譲る。三つ目は、会社のビジョン、方針といった経営の根幹に関する決定権を譲ることである。この三つの権限と責任を譲ることを「経営を譲る」という。代表者が2人いれば会社は混乱するだけである。

  2. 引退社長は何をするか
     会社に残る場合は、代表権を持たない取締役会長か相談役が理想で、非常勤が望ましい。俗に言う隠居が理想であるが、引退社長が未だ若い場合は、別の事業や、今までやれなかった新商品の開発の担当とか業界の役員や各団体の役員として社会貢献する方法もある。又、旅行やゴルフ等の趣味に徹するとか大学の社会人コースに入り青春に帰られる方もある。

  3. 承継後はあたたかく見守る
     引退後はいちいち口出しをしない。あくまで相談役に徹する。親から見れば子はいつまでも子の関係であるが、子という字は完了の了という字にーと書く。すなわち全てが完了し、一から始まると考えてよいのではないか。また親という字は木の上に立って見ると書くがごとく、誤った方向に行かないようにあたたかく見守ることである。

3 実務面からみた事業承継

(1)個人の場合

 親について廃業届け、子については開業届けを税務署に提出する。営業財産については、土地建物は親の所有のままで使用賃借とし、その他営業財産については、使用賃借、売買か贈与、又は一時親からの借入金とする等の方法があります。前述の、相続税対策の1の(9)「経営の贈与をしておく」を参照して下さい。

(2)法人の場合

 役員の変更登記と諸官庁への変更届け位で手続きは完了する。税務面では社長が会長に就任した場合も一定条件を満たせば退職金が支給できる。


4 事業承継の相続税対策

(1)個人事業の相続税対策


すでに記載したところですが、次のものがあります。
  1. 経営の贈与をしておく
  2. 個人事業を法人にする
(2)法人の株式等の相続税対策

 法人の相続税対策はほとんど株式対策につきると思われますが、法人が代表取締役等から借りている金額(役員借入金)についても、役員の相続財産となりますので対策が必要となります。

  1. 役員借入金の整理
     役員借入金は役員からみれば貸付債権であり相続財産となります。中小企業ではよく存在する勘定科目で、資金繰りの都合でなかなか返済できないのが現状です。法人の収益状況が悪いときは役員報酬を引下げて役員借入金を徐々に返済するか、役員借入金の一部免除や役員借入金(個人からみれば貸付債権)の贈与等の方法により整理しておく必要があります。

  2. 株価の低い時に株式を贈与する
     同族会社の株式の相続税評価額は純資産価額方式が併用されますので、法人の業績が低下して財務内容の悪い時は株式の評価も下がりますので贈与をするチャンスといえます。又、多額の設備投資、例えば工場や店舗の購入等の時は、預貯金が減ったり借入金が増えたりして、一方購入した資産の方は取得価額でなく相続税評価額(課税時期以前3年以内に取得した土地等や建物等は相続や贈与の課税時期における通常の取引価額、用件を満たせば帳簿価額)で計算されますので、一時的に純資産価額が低くなります。さらには、社長が引退して多額の退職金を支給した場合も株式の評価が低下しますので、そのような時に株式を贈与することです。

  3. 同族株式の従業員持株会への移転
     同族会社のオーナーにとって自社株式は相続税評価額は高いが、実際は手放すこともできず換金性がないため、その対策にはいちばん頭を悩ませるものです。そこで、従業員持株会制度を導入し、従業員に自社株式の一部を譲渡することによって自己所有の株数を減少させれば相続税の対象となる株数が減って相続財産を減少させることができます。同族会社の従業員持株会のほとんどは民法上の組合に当たり、単なる個人の集合体でありますから、従業員の持株が会社外部の第三者へ売却されるのを防止し、従業員の退職の際に自社株式の買取りをスムーズに行えるようにすることができます。又、会社側にとってみれば、企業と従業員の共通意識、モラルの向上にも役立つというメリットがあります。なお、一般的には従業員は同族株主ではないので、株式の評価は「配当還元方式」になりますので、年配当率が10%以下の場合は、発行価額以下の金額で従業員に譲渡することができます。

  4. 別会社を設立して評価を下げる
     会社の業績が良い場合、収入が増え続けると年々会社の資産が増え株価が大変高くなってきます。そこで二世による新会社を設立し、一部の部門(収益があがる部門)を分離して新会社へ移管すれば親の方の会社の株価を徐々に下げることができます。新会社の株主には親を外し、子や子の家族等としておくことが大事です。又、新会社への固定資産等の移管は売買か賃貸借にすればよいでしょう。さらに、新会社を作ることにより、二世を代表取締役にすれば、経営の一部を生前に委譲することになり後継者の経営者としての教育や後継者の育成ができますので、まさしく事業承継対策といえます。

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